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ありがとう サヨナラ

ついにカオスは倒れ、世界に未来が訪れた。
それと同時に、別れの時は手を伸ばしたら掴めるほどに近づいているのを感じた。
それは以前から分かり切っていたことのはずなのに、もしかしたらそんなことないんじゃないのかと期待していた自分もどこかにいて。
そして、それ以上に。
彼と離れてしまうのが、これほどまでに辛いことだと思わなかった。







きっかけはいつのことだっただろう。
気がつけばいつも目で追っていて、話しかけられるとドキドキして。
きっと彼のことが好きなんだと気づいたのは、そこまで昔の話じゃない。
ただ、そのことを彼に伝えるつもりは毛頭なかった。
禁欲的で常に目的のため皆を統べて戦う彼に、この想いを伝えることは重い罪のように感じられた。
それ以前に自分も彼も男ではないか。
伝えて関係を壊してしまうなら、今の温い水のような心地よい関係を心を偽って紡ぐべき。
彼のように強くなれない俺は、そう考えて逃げることでこの想いと向き合い続けた。

ただ、それで本当に良いのかは今でも分からないけど。




見知らぬ場所、でもとてもきれいな場所。
今まで戦ってきた荒れ果てた地とは違い、水が煌き、草木が揺れ、花が咲き乱れる鮮やかな世界。
美しい光景に目を奪われるのも束の間、別れはもうそこまで近づいていた。
「お別れ、か…」
そう呟いたティーダの体は輝き、しかし今にも消えてしまいそうで。
行動を共にする期間が長かった彼に別れを告げることもできない内に、その淡い光は消えてしまった。
それに呼応するように、ジタンが、スコールが、クラウドが。
ティナが、バッツが、セシルが、オニオンが。
淡い光となって消えて行く彼らを見送って、ついに彼と二人きりになってしまった。
先ほどから手先の感覚が薄れているのを感じる。
きっと、俺ももうすぐ彼の元を去るのだろう。
彼に秘めた想いを伝えず、このまま仲間のままで。
それにもう言ったところで仕方がないのだ、今更この想いを伝えてどうなるというのだろう。
そう言い聞かせても、今まで無視してきた自分が納得してくれない。



まさか、こんなに別れが辛いとは思わなかった。

もっとこのときが続いてくれればいいと願っていた。

でも、もう足の感覚もなくなってきていて、彼と離れ離れになることを強く感じた瞬間。



何故だか、涙が溢れてきた。






「…フリオニール?」
「……ごめん」
霞んだ手で涙を拭っても、次から次へ溢れてくるそれは止まる気配がなくて。
少し前にいた彼は俺に近づいて、何も言わずにそっと目元を拭った。

やさしくて、あたたかい手。

その手が頬に触れる感覚も、温かい体温も、徐々に薄れていく。
もう彼に会えないという事実が、嘘をつく自分を責め立てる。
それに応じるように、今まで押さえ込んできた想いが叫び続ける。
――本当にこのままでいいのか?、と。
だめだ、やっぱり伝えよう。
どう思われたって構わない、だからこの想いを言葉にしよう。
「…ウォーリア、あの、俺………!」









「ずっと好きだった」という言葉は、彼の口付けで遮られた。









数秒にも満たない塩辛いキスは、何だか長い間そうしていたような気分にさせた。
突然の出来事に惚ける俺の前には、優しく微笑む彼がいて。
そんな彼を見ていたら、ずっとうじうじしていた自分が情けなくなって、苦笑いした。

「あーあ」

涙が流れる感覚も分からない。
俺は今、彼の目にどのように映っているのだろうか?
段々視界がぼやけて、彼のあの優しい微笑みも見えなくなって。
それでもさっき触れた唇だけは強い感覚を残したままだから、まるでそこだけは俺の体じゃないみたいだった。
そして、体がふわっと風に舞った。
その感覚は残酷なくらい優しくて。

「もっと早く言えばよかったなぁ」





そんな言葉も、風に消えた。

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