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Starry Sky

恋に落ちた時を覚えている?
あれはこんな満天の星空の下。
もうどれだけ手を伸ばしたって叶いやしないけど。
神様だっているかどうか知らないけど。
どうか、どうかもう一度だけ。







異次元の彼方、神々の戦いが繰り広げられたのはもう昔の話である。
はっきりとしたことは覚えていなかった。
あの戦いの場にいたのは俺の思念の一部であって、俺自身ではないからだ。
それでも、やはり俺の一部であったことには変わりはない。
もてあました感情がそのことを如実に示していた。




あの戦場の中、人を好きになった。
人懐っこくて、明るくて、どこか危なっかしいそいつ。
初めは弟ができたみたいだ、と思った。
いつも一緒にいたということもあるが、自分を慕う彼の姿に、昔の自分の面影を見ていたように思う。
義理の兄を慕う自分の姿もこうであったのだろうか。
その頃の記憶は曖昧であったが、微笑ましさを覚えていたのは確かだ。
しかし、その感情が一転した出来事がある。
それはまるでミルクを零したように見事な星空が広がった日のこと。

初めて彼に「好きだ」と言われた。


最初は何の冗談かと思った。
彼が悪戯好きであったのもそう思う理由の一つであったし、第一同性である自分にそんなこと言うはずがないのだ。
しかし、真面目に取り扱わずに流したことに腹が立ったらしい。
力いっぱい腕を引かれたと思えば、そのまま強引にキスをされた。
「オレ、本気だからな」と一言付け加えられてしまえば、冗談だと笑い飛ばすことすらできない。
確かあの時は混沌の神を倒すための旅の途中で、結局もやもやとしたまま最終決戦に挑み、そのまま彼と別れてしまった。
どうもまんざらでもない自分に悩み、残された時間の少なさに悩み、足踏みしたままの状態での別れだ。
当然消化不良であり、今でも思い悔やまれる。
だから、こんな星空の日はどうしてもそのことを思い出してしまうのだ。





「あ、流れ星」
一筋の光が一瞬で流れ、消える。
草原に投げ出した身体を起こし、消えた方角を見つめる。
そこに何があるわけでもないが何故か気になった。
気が済んだので、また身体を仰向けにして寝転がる。
夜の冷えた風がどこか心地よかった。
流れ星に祈れば願いが叶うんだっけ、と今更ながらに思い出す。
どこにも確証がないのに未だに語り継がれるそれ。
それはどこか、誰かに希望を持たせるための優しい嘘のようである。
はは、と零れた笑いの後、さっき消えた星に冗談を言おうと口を開く。


「もう一度ティーダに会いたいな」
「呼んだっスか?」


独り言に返ってきた返事は、記憶の片隅に確かに存在する声。
いや、まさか。
幻聴かと思っていたその時に。

「お望みどおり、会いにきたっス」

あの笑顔が俺の顔を覗き込んでいた。
これがホンモノだとすると、次に沸きあがる疑問。
「……何でここに?」
別世界の彼と自分が会い見えることなどないはずだ。
あの異次元にいたおおよその人物は、自分と同じような状態であったから出会うことができたのだ。
「言ったろ、オレはここにいるって。
 でも、あんまし長い時間いられないんだ」
その言葉は本当のようで、スッと身体を起こして彼を見ればあの時のように消えかかっていた。
幻でも見ているのだろうか。
それでも構わなかった、俺には彼に伝えなくてはいけないことがある。
「あの時、俺に好きだって言ったよな」
「そうっスね」
「俺、冗談だと思ってた」
「だからキスしてやったじゃないスか」
「あの時からずっと考えてて、でも最後まで言えなかったんだけど」
「うん」
「俺も、お前のこと…」
「あー、ちょっとタンマ!」
突然叫んだ彼に驚く。
今更遮る理由もないはずなのに、彼はブツブツと何か呟いていた
「こんなすぐ消えるときに、そんな嬉しいこと言わないで欲しいっス」
「どうして?」
「戻ったときに寂しさ倍増じゃないスか」


「なら、帰らなきゃいい」


すんなり口をついて出た我侭。
我侭などほとんど言ったことはないが、この時は自然に喋るように出た。
彼もそのことに驚いたようで、目を見開いていた。
「…フリオ?」
「…すまない」
「何で謝るんスか」
彼は困ったように笑って、「しゃーないなー」と呟きながら頬をかいていた。
そしてその手を止めて、俺の前に突き出す。
「目、閉じて」
言われるがままに瞼を閉じる。
真っ暗な闇の中、彼の声が響く。
「三つ数えて」
息を軽く吸い込んだ。
そして、音にして吐き出す。


「1」


「2」



「さ」
「好きだ、フリオニール」



突然の言葉と、唇に落ちる感覚。
ハッとして目を開けば、彼はもうそこにはいなかった。
夢か、はたまた幻か。
力が抜けて再度草原に横たわれば、またざわざわと胸を騒がせる感覚。
「結局また言えずじまい…か」
しかし、それもいいかもしれない。
またこんな星空の日、自分はまた彼を想って悔やむのだ。




満天の星空。
そこに潜むのは些細な後悔と、そして。

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