忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2年と7cmの変化

まぁ、今までずっと一緒にいたから、そんなこと意識したことはなかったわけで。
じゃあ今までどうしてたんだって聞かれたら、違和感は感じてたけどそれだけだって言うしかない。
こうして目に見える形になって現れると何となく微妙な気分。
あいつは何か得意げな顔してるけどさ。
うん、フクザツ。



それが発覚したのは去年の8月終わり。
甲子園が終わって3年生が引退し、次期部長にあいつが推され、代々受け継がれてる例のジャージに袖を通したときだった。
元々それは牛尾主将が自分のサイズに合わせて作ったもので、ジャージではあるが質のいいオーダーメイド品だ。
そして、それを元々着ていた彼は野球部の中でも長身の方に入る人物だった。
初めにジャージを受け継いだ猪里先輩はずいぶん丈を余らせていて、まさに服に着られている状態だった。
あいつもその先輩と大差ないくらいだと思っていたのだ。
思っていたのだが。
「わぁ、やっぱりちょっと丈が余っちゃったっすね」
その丈はあいつの手を半分隠せる程度しか余らなかった。


そういや最近、抱きしめたときに収まりが悪いなーとかちょっと思ってた。
キスするときもあまり屈まなくなってたな。…よく考えれば思い当たる節たくさんあんじゃん。
いや、だからって別にあいつのこと嫌いになったりはしないけど。
やっぱり、何かほら、ちょっと残念だなーとは思うわけだ。
オレは結構あの身長差が気に入っていたりとかしてたわけで。でもあいつ自身は少し不服だったみたいだけど。
いや、まさかまだ成長期終わってなかったとかさ。
オレは1年の時に終わったから、みんなそんなもんだと思ってた。



そして、時は巡って桜咲く4月。
2度目のクラス替えはあいつと同じクラス。
去年はどうしようもないバカと一緒のクラスだったので、きっとそれに耐えたご褒美だろう。ありがとう神様。
入部試験も無事終了し、今年も大量の後輩が入部してきた。
あのバカ猿が2年前に甲子園の時計に打球を叩き込んで破壊したことで、十二支は全国でも名の知れた高校になった。
昨年は埼玉選抜としてだけではなく埼玉県代表としても甲子園に駒を進めたこともあり、今年は昨年以上に部員が増えている気がする。
あと女子マネ、というか女子生徒の数も異様に増えたような……いや、それは考えないでおく。正直怖い。

部長の仕事は大変だと時々こぼすこともあるが、あいつはなかなかうまく立ち回っているように思える。
カリスマ性みたいなものはないんだろうけど、うん、それでもあいつについていこうと思える。
そういや、昔チームが一緒になった屑桐さんが「上に立つものは行動で示さなければならない」とか何とか言ってた気がする。
きっとそれをちゃんとやってるからだろうな。自然と慕われるんだ。
まぁ、オレとしては少し複雑だけど、よく考えりゃ男を好きになるなんてよっぽどのことだから考えすぎだな。
……うわ、今のは自分で思っておいて少し傷ついた。


ジャージの丈はほんの少し縮んでいた。
あいつが自分で繕ってちょうどいい丈にしているんだと思い込みたいが、直すならきっちり直すやつなんだよ、あいつは!
そういや身体検査のときにあいつの記入用紙を見せてもらったが、確か172とか書いてあった気がする。
いやいや伸びすぎだろって突っ込みたくなったが、あいつの成長期が終わってなかったんだから仕方がない。
オレの用紙を見ながら「もしかしたらそのうち越しちゃうかも知れないっすね」とか言われたけど冗談じゃねぇ。
頼むからこれ以上は伸びないでくれよ。




「何か不満なんすか?」
「…何が?」
今年の雄軍メンバーも決まり、夏の大会に向けた練習が本格化してきた頃。
帰りに寄ったハンバーガーショップで、注文した商品を食べようとした矢先にそんなことを言われた。
いつも一緒に帰る辰や他の面子は俺たちの関係を知っているので、今回は気を利かせて久々に二人きりにしてくれた。
学校にいるとき、オレは大抵女に追い回されているのでゆっくり話ができないし、最近は練習も忙しかったから、こうして話すのも久々な気がする。
いや、だからと言ってぞんざいに扱ってきたつもりはない。けど…不満?
頭の中はクエスチョンマークでいっぱいなのだが、それを知ってか知らずか目の前の彼は飲み物を一口飲んでから小さく溜息をついた。
「気付いてないんすか」
「だから、何に?」
「ボクがジャージ着てると、何か複雑な顔してるっす」
ナゲットを1つ口の中に放り込みながら、そんなに顔に出てたのかと少し驚く。
まぁ、辰にも考えてること顔に出やすいって言われてはいたけど。
ここは答えないと機嫌が悪くなりそうなので、口に含んだそれを飲み込んでから一拍おいて口を開いた。
「別に。とりあえず身長伸びたのが惜しいだけ」
「はい?」
「昔はもう少し小さくて可愛かったなーって」
「な、何言ってるんすか!?」
「まぁ、今も十分可愛いけど」
つらつら思っていることを口に出しながら、最近出たばかりの新しいハンバーガーに齧り付く。
ソースが凄い零れるのに、包装が包み紙じゃなく箱ってどういうことだよこれ。あー、後でナプキン取りに行かないと。
そんなことを暢気に考えている間に、目の前の人物は顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
そーゆーとこが可愛いんだよ、と言いたくなるのはぐっと堪える。
「冥くん、昔からそうだったっすけど、あまり恥ずかしいことぽんぽん言わないで欲しいっす…」
拗ねたように言って、またストローを銜える姿が愛らしい。
あ、そうそう。
付き合ってから1年ちょっと経ったら、あんなに恥ずかしがって言ってくんなかった下の名前で呼んでくれるようになったし、オレにも下の名前で呼ばせてくれるようになった。
オレとしては呼び捨てだと更にグッとくるんだけど、それはもっと時間が経たないと無理かもしれない。
でも、冷静に考えるともう付き合い始めてそろそろ2年なのか。何か感慨深い。


こいつが大きくなったり、部長になったり、オレの呼び方が変わるだけの時間、オレたちはずっと一緒にいた。
お前はこうして変わっていってるけど、オレはその時間に見合うだけ変われてんのかな?


「なぁ」
「何すか?」
「オレ、何か変われたか?」
「…唐突すぎて意味分かんないっす」
彼は困ったように笑いながら、頼んでいた照り焼きバーガーの包装をようやく剥がし始めた。
オレはといえば、あんなに食べづらかったハンバーガーが残り1口とセットメニューのポテトとドリンク、単品で頼んだナゲットが3つ残っている。
ポテトについてきたナプキンの上にそれを乗せながら、食べたかったら食べていいと促して、自分が考えてたことを掻い摘んで伝えた。
あいつは照り焼きバーガーを頬張りながらオレの話を聞いた後、口の中のものを飲み込んでから少し考える仕草をして、それからにっこり笑った。
「何も変わってないっすよ」
「…マジで?」
「だって、変わる必要ないじゃないすか。だから変わらなかったんでしょう?
 キミなら、変わる必要があるって思ったときに、変われる努力をするはずっす」
それだけ言って、またハンバーガーに口をつけた。
こいつにとってオレはそういうタイプの人間だったらしい。確かに言われてみれば、と思ってしまった。
しかし、口に含んだそれを飲み込んでから「あ、でも」と小さく呟く。
「何?」
「ちょっと意地悪になったっすよね」
「…はい?」
「シてるときとか、何か前に比べて焦らすようになってないすか?」
「ぶッ!?」
飲み物戻しかけた。やべぇあぶねぇ。
つかこいつは何言ってんだ突然。
そんなオレの心情を知ってか知らずか「あれすっごい辛いんすよねー」と飄々と言ってのける愛しい恋人様。
あれ、こいつこんないい性格してたっけ…?
ああそうか、これも2年の賜物か。
時間ってやっぱり偉大だ、人をこんなにも変えてしまうんだな。
手放しに喜んでいいのかどうか分からない変化まで与えてしまうのはちょっと考え物だが。





ようやく喋れるようになって、疲れた声で呟いた。
「とりあえず、お前、やっぱ変わったな…」
「それはどうも」
そう言って悪戯っぽく笑う顔はとんでもなく可愛い。
こいつには年々弱くなっていってる気がするな、とぼんやり思いながら、ナプキンに広げたポテトをいくつか頬張った。

***

犬子高校3年生パロ。
最終回見たら身長差が20cmとか信じられなかった。ジャージも違和感なく着ていたので多分彼は成長したと思う。
猿野が176、犬飼186、子津172、辰羅川174、兎丸160、司馬180が理想です。
※追記:コミックス見返してみたら司馬君が犬飼と同じくらいで兎丸は1年子津と同じくらいありそうです。でかいよみんな…。
※更に追記:大神さんがおんなじの着てた。ということは主将に合わせて毎年作ってるのかも。なん…だと…。

自分で書いてて驚いたんですが、こいつらただのバカップルじゃねーか!!
この二人はもしかしたら今の自分には珍しいCPなのかもしれない…。

拍手

PR

Copyright © Re:pray : All rights reserved

「Re:pray」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]