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酒は飲んでも飲まれるな

「っしゃー、テメーら全員もうハタチだな!
 つーわけで酒飲むぞ酒!!」
これが、今回の騒動の発端となった一言である。
もっともこのときはまだこんなことになるとは誰も知る由もなかったのだが。





騒動の渦中に巻き込まれた犬飼は大変困り果てていた。
2時間前までは至って平穏だったのだ。
ただ久しぶりに6人で集まって、初めて一緒に酒を飲んだだけなのだ。
彼はマイペースに持参したカルーアを牛乳で割って飲んでいただけなのだ。
そこまでは何も問題はなかったのである。
問題は彼が牛乳と何かつまめるものなどを買いに辰羅川とコンビニに行っている間に起こってしまったのだ。


「おい」
「なーに、犬飼くん」
この混沌とした場でただ一人正気を保っていた兎丸が、残っていたらしいスクリュードライバーを飲みながら答えた。
もう結構な数を飲んでいたはずなのだが、まだケロリとしている。
司馬は酔ったらすぐに寝てしまうタイプだったらしく、誰かが持ってきたブランケットをかけて部屋の隅で寝ていた。
しかし、犬飼にとって今そんなことはどうだっていいのだ。
彼にとって今一番の問題は、部屋に入って早々「おかえりっすー!」と言いながら飛び付いてきた子津ただ一人なのだ。
あまりにいきなりすぎて、買ってきたものを全て放り投げてしまった上に、バランスを崩して閉めた扉に頭をぶつけた挙句尻餅をついてしまった。
「とりあえずどういうことか説明しろ」
「やだなー、ちょっと子津くんにお酒飲ませただけじゃん」
「出かける前はこんなんじゃなかっただろ、何飲ませた」
「ビッグマンの鏡月割り…あれ、逆だったっけ?」
「割ってねえ!」
「作ったのは兄ちゃんなんだし、ぼくらみんな飲まされたんだから、文句なら兄ちゃんに言ってよ」
おいしくなかったんだから、と口を尖らせて兎丸が言う。
しかし、元凶の猿野の姿はどこにも見当たらない。
一部始終を近くで見ていた辰羅川は眼鏡をかけ直しながらようやく口を開いた。
「で、その猿野くんは?」
「トイレで戻してるよ」
よく耳を澄ますと苦しそうな嗚咽の声が微かに聞こえた。
しかし、それは自業自得なので犬飼も辰羅川もそれ以上触れようとしなかった。



子津はあまり酒に強くないらしい。
そのことにその場にいた全員が感づいたのは1時間ほど経ってからである。
彼が一缶のチューハイを飲み終えるまでに、その場のほとんどの人物は3杯目に突入していた。
その上ほんのりと頬が色づいていたのだから、それで感づかないほうがむしろおかしいだろう。
「で、犬飼くんのガードがなくなった内に酔わしちまおうぜって兄ちゃんが言ったんだよね」
「それで全員が乗ったと…」
「シバくんは止めたけどね~」
明るく答えながら兎丸は先ほどまで飲んでいた缶を空け、間髪いれずに買い足したコーラショックの口を開けた。
辰羅川は出かける前までゆっくり飲んでいた赤ワインを再度グラスに注ぎながら、きっと返り討ちにあってしまったのだろう司馬に心の中でご愁傷様と呟いた。


犬飼もくっ付いて離れない子津を引きずりながら、何とか自分のグラスのある位置まで戻ってきていた。
内心付き合って4年経っても滅多に甘えてこない子津からのアプローチはかなり嬉しかったりするのだが、同時に二人っきりのときにして欲しかったと押し倒したい衝動を抑えつつ涙を呑んだ。
「でも犬飼くんと子津くんまだ付き合ってたんだね、とっくに愛想つかされてるかと思った」
「おい」
「だって犬飼くん、プロ入ってからあっちこっち引っ張りだこで忙しそうだったじゃん」
兎丸の言うとおり、球界入りしてからの犬飼は多忙だった。
高校卒業と同時に猿野と犬飼はそれぞれ別の球団に入ったのだが、以前からの話題性や容姿も伴い、犬飼にはよく試合以外の仕事のオファーがやってきた。
犬飼にしてみれば迷惑この上ないのだが、スポンサーは球団にとってなくてはならないものなので、無下に拒むこともできなかった。
それで仕事を引き受けてはまた増えて…の繰り返しである。
もちろん自身の練習にも時間を費やさなければいけないので、会いに行ける機会も激減した。
一緒に住むことも提案したのだが、せめて自分の次に歳が上の弟妹が高校に上がるまで待って、と断られてしまった。
「子津くんですから言わないのでしょうけれども、寂しい思いをされたのかもしれませんね」
「………かもな」
ふわふわと微笑んだまま右側に貼りついている子津を見て、犬飼は小さく呟いた。
本当は言って欲しいのに、とも思ったが、口には出さずにそのまま作ったカルーアミルクを一口飲んだ。


「めいくん、何飲んでるっすか?」


突然、少々呂律の回っていない声でぼんやりと子津が尋ねた。
その瞼は今にも閉じてしまいそうで、今喋っているのもやっとといった感じだ。
「カルーア」
「ひとくち、ほしいっす」
「…とりあえず酔っ払いにはやれん。もう寝ろ」
「ひどいっす、酔ってないっすよー」
どこがだ、と言いたくなったが、今の子津相手に何を言っても無駄だろう。
そのうち勝手に寝るだろう、と考えた犬飼は、頬を膨らませる子津を無視して再びグラスに口をつけた。
初めは面白くなさそうにそれを見ていた子津だったが、しばらくして何故かふわりと微笑んだ。
「めいくんがそのつもりなら、ボクだって考えがあるっすよ」
「な」
に、とグラスから口を離した犬飼が呟くその前に、子津の唇がそれを塞ぐ。
そればかりか、するりと舌まで差し込まれた。
突然の出来事に兎丸と辰羅川も目をそらせず、呆然とそれを見ていた。
しばらくの間息漏れと艶かしい水音が響いたが、突然がくりと子津が崩れ落ち、それを慌てて犬飼が抱き止めた。
どうやら子津はそのまま意識を手放してしまったらしい。
「…………」
「…………」
「…………」
気まずい沈黙。
それをいち早く破ったのは兎丸だった。
「ごちそうさま」
「…………」
犬飼は右手で顔を覆って俯いたまま、何も言わなかった。





後日、今回の騒動を兎丸に聞いた子津は可哀想なほど慌てながら犬飼に謝った。
どうやら猿野に酒を勧められた後の記憶はごっそりなくなっていたらしい。

***

みんな、お酒って怖いから気をつけようね!
特に記憶なくすのは厄介だからね、知らない間に叫んでたり好きな子の名前誰かに言っちゃったりするからね!
私は酒に飲まれたことないけどね!

ビッグマンの鏡月割りは友達が飲まされてました。飲みなれてない頃だったからリバースしてたけどね。
自分の限界知るのもいいですが、あまり無理はしないように…。



個人的に兎丸はザルだと思います。
辰は無添加の果実酒が好きで、ストレートで飲むけどペースと節度は絶対守る。だから酔わない。
犬飼は牛乳で割るタイプの甘めのカクテルが好きだと個人的に萌える。やっぱりコーヒー牛乳好きだから一番はカルーアって信じてる!
そしてこっちもペース守るタイプ。ビールかけのとき大変だね!
子津くんは今回酔い潰しちゃいましたが、酒豪でも個人的にはありです。いじられて飲まされるタイプ。

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